「トルコの街角から」「小さな友達」と過ごした学び舎 星野安杏

「トルコの街角から」「小さな友達」と過ごした学び舎 星野安杏

「では、学内での猫や犬に関して注意事項を説明します」「猫が近づいてきたときは水を蒔きましょう」  2014年、ボアズィチ大学で行われた留学生のためのオリエンテーションの最後だったでしょうか。キャンパス内での猫の取り扱いに関するアナウンスがされました。真面目な顔で猫の追い払い方を説明する様子は、今も頭に強く残っています。  猫の写真を撮ってきた私ですが、実は日本にいるときは犬の友達が多く猫はほとんど触ったことがありませんでした。今でこそ猫と触れ合って写真を撮っていますが、ボアジチ大学を初めて訪れたときには猫の多さに少したじろいでしまいました。  私が2014年から15年にかけて留学していたボアズィチ大学はイスタンブルのルメリヒサルにキャンパスがあるトルコの国立大学です。耳慣れない「ボアズィチ」とはトルコ語でボスフォラスを意味します。まさにボスフォラス海峡を見下ろすキャンパスでは、世界各地から集まった学生が日々研究に励んでいます。  そんなボアズィチ大学。実は、キャンパスに猫や犬が沢山いることでも知られています。留学に行く前に話は聞いていたのですが、実際に訪れると猫がのびのびと暮らす姿にカルチャーショックさえ覚えました。 学食が開く時間になると玄関の前で学生たちをじっと待っている猫たち。一人でどこかでご飯をたべようものなら彼らの恰好の餌食になること間違いなしです。授業に行けば猫。勉強スペースでレポートを書いているときにパソコンに乗ってきた猫にレポートを削除されかけたこともありました…。ATMでお金を引き出すにも、寒い冬には猫が先に座っていることもあり渋々別のATMを探すことも。辛いことがあったとき、心配そうに顔を覗き込んできたり、足元に寄り添ってきてくれたことは忘れられません。  1年という短い間ですが、喜怒哀楽を共に過ごした猫や犬たちはトルコでのかけがえのない友達となりました。ふっと気がつくと学校に行って友人に挨拶するように、猫や犬にも「おはよう、元気?」と自然に声をかけている自分がいました。  門をくぐれば犬たちがお腹を出して寝ている。授業に向かおうとすれば猫たちが足にすり寄ってきて遊ぼうよと誘惑してくる。そんな穏やかな日常を懐かしく思い、そしてこれからも続くよう祈りながら筆を置くこととします。 (Photo by Kıvanç Yazan)

「トルコの街角から」バラットで過ごす猫とのひととき 星野安杏

「トルコの街角から」バラットで過ごす猫とのひととき 星野安杏

こんにちは。1月13日から21日までお休みをもらってイスタンブルに里帰り(?)していました。1年半トルコに行かなかったせいか、見るものすべてが懐かしく、また目新しくも見えてき不思議。以前より観光客も増えたのか、活気のあるイスタンブルに嬉しい気持ちになりました。 今回は、イスタンブルのバラットというところにあるカフェを紹介したいと思います。バラットという名前、聞いたことある方はいらっしゃるでしょうか。 歴史に関心がある方は、コンスタンティノープル総主教座などでご存知かもしれません。最近では、ウクライナ正教会の独立に関するニュースを目にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。  バラットには、観光であれば必ず訪れるであろうエジプシャンバザールがあるエミノニュからバスに乗って行くことができます。古い建物が残る下町っぽい雰囲気がが独特で、写真スポットやカフェスポットとして注目されてきています。 今回ご紹介するカフェは「ナフタリンカフェ」です。バス停からおりて、コンスタンティノープル総主教座へ向かう道を行く途中、右手にあります。このカフェ、猫が自由に出入りしています。初めてお邪魔したのは4年前の留学中。写真のように寝ている猫のリラックス度にカルチャーショックを受けました。 今回も中にはいると、暖房の近くの温かいテーブルと日当たり良好な広めの机に座っている猫が2匹出迎えてくれました。私は日当たりのい い窓際の席に座りました。思わず「ちょっとお邪魔しますね。」と声をかけてしまうほど、堂々と 座っているこの子、名前はクヌシュです。 人間に慣れているようで、こちらには「また人間が来た」と言わんばかりの視線を投げて、外を見ています。通りを歩く人を眺めるのは好きなのでしょうか。 のんびりした時間を過ごして、さぁと外に出るとそこにはまた猫さん。中に入りたくて、外の椅子に座ってお客さんが出てくるのを待っていたようです。 そして向かいの床屋さんを覗いてみると、そこにも小さな猫が!お行儀よく座っているように見えますが、入ろうとしてドアに飛びついた肉球のあとが沢山残っていました… トルコではよく、引っ越す時はそこの動物たちをみるようにと言います。動物たちが逃げなければそこに暮らすご近所さんたちもいい人だからだそうです。 リラックスした猫たちとそれを見守る人々に心も体も温まりました。イスタンブルでは、ナフタリンカフェのように猫や犬がのびのびと過ごしているカフェをよく見かけます。動物を飼っていなくても、勝手に猫が外の席で寝ていたり、そして人もそれをほっておいたり。 町歩きが楽しいイスタンブル。足が疲れたら、猫と一緒に一休みはいかがでしょうか。

「トルコの街角から」釣り人が教えてくれたイスタンブルの楽しみ方  写真家 星野安杏

「トルコの街角から」釣り人が教えてくれたイスタンブルの楽しみ方 写真家 星野安杏

釣り人が教えてくれたイスタンブルの楽しみ方  イスタンブルでは初雪も降り、冬本番だそうです。冬のイスタンブルというと私は思い出す光景があります。ガラタ橋で釣りをするおじさん達です。「雨にも負けず、風にも負けず」と言いますが、まさに寒い夜に火を焚いてまで釣りをするおじちゃん達の光景に純粋に「なぜ?」と強く思ったのです。   そこで、当時一緒の寮だった友人と一緒にカラキョイに行って一式60TL(当時のレートで3000円程)の安い釣竿を買い、めでたくイスタンブルで釣りデビューすることになりました。親しみやすそうなおじちゃん達に声をかけて、仲間に入れてもらいます。安い釣竿なので全く釣れません。それでも、笑いながらもエサのつけ方から自分の釣りのテクニックまで教えてくれます。時にはラクやエフェスを片手に、缶詰の煮物やチーズをつまみながらトルコの文化や政治、人生相談まで色々なことを話しました。 今思い返せば、おじちゃん達も私も「釣り」という行為よりも、一緒に過ごす「時間」を楽しんでいたのでしょう。魚が釣れるかどうかはあまり問題ではないのです。目の前に広がる海を見ながら、その時間を楽しむことが釣りの醍醐味なのです。私はおじちゃんたちの仲間に入れてもらいましたが、釣りには色々な人が来ています。親子や兄弟、学生やオフィスカジュアルのような格好の人まで。色々なバックグラウンドの人と話せるのも釣りの楽しみの一つです。  釣りを楽しむのはガラタ橋だけではありません。アジア側のウスキュダルでヨルダン人の友人と釣りをした時には、通りがかりの人が釣りを教えてくれました。ベシクタシュも海に近いので釣りを楽しめます。竿を持っていなくても、「お!今日は大漁ですね。」と話すだけで会話が生まれます。釣りをはじめたことで、イスタンブルとの距離感が縮まった気がしました。私が東京に帰って、仕事や満員電車で疲れた時に思い出す「トルコ」はこういう些細な日常の光景だったりします。   留学から日本に帰る時、釣竿は日本に持って帰れないので他のゴミと一緒に玄関に置いておきました。滞在中1匹しか釣れませんでしたが、人生初のマイ釣竿。この釣竿のおかげで出会えた人もいるので、少し愛着があります。そこで大家さんに遭遇。「半年間お世話になりました」とか「今度はいつトルコに来るの?」と他愛も無い話をしていると、ふと大家さんの目が変わりました。「バハル(トルコでの私の名前)、なんで釣りに誘ってくれなかったんだ!」少し寂しそうな顔の大家さん、いつか一緒に釣りをしようと話して別れました。あれ以来、なかなか時間がなくてトルコに行っても釣りはできていませんが、いつかまた挑戦したいと思います。

「トルコの街角から」アヤソフィアの小さな住人たち② アヤソフィアの新入りたち  写真家 星野安杏

「トルコの街角から」アヤソフィアの小さな住人たち② アヤソフィアの新入りたち 写真家 星野安杏

アヤソフィアの小さな住人たち②  アヤソフィアの新入りたち アヤソフィアの小さな住人たち② アヤソフィアの新入りたち 先月はアヤソフィアの館内で出会った猫、グリを紹介しました。グリはアヤソフィアの長老猫ですが、今日は新しく仲間に加わった子猫たちの写真を紹介します。  2017年の夏、アヤソフィアの門の横で母猫と2匹の子猫に出会いました。普段から観光客に遊んでもらっているのでしょう。カメラを怖がる様子もありません。むしろ、「これ何?」と言わんばかりにレンズに顔を近づけたり、胸を張っている座ってみせる姿はまるで「撮って!」と言っているようです。  ところで、子猫だけでなく動物の写真を撮る際は、被写体に話しかけて許可をとるようにしています。レンズを怖がる子もいるので、ストラップで遊んだりしてカメラに慣れてもらい、リラックスしてもらうこともあります。  特に子猫を撮る場合は、近くにいる親に許可をとります。「私は危険な人間ではありません。お子さんの写真を撮っても良いですか?」と言葉でお願いします。もちろん言葉そのものが伝わっているとは思いません。しかし、面白いことに親は嫌なら嫌という素振りを見せますし、大丈夫なら後ろに下がるなど何かしら態度で示してくれます。  今回もまずお願いしようと母猫を探したら、半ば呆れた顔で後ろに下がっていきました。どうやら子猫たちの好奇心に根負けしたようです。そんな母猫には目もくれず、子猫たちはピントが合わないくらい近くまで寄ってきます。  次第にカメラに慣れてきたのでしょう。2匹で追いかけっこをしたり、木登りを始めて元気いっぱいな姿を見せてくれました。スルタンアフメットを訪れた人々にも物怖じせず近づきます。その姿はすっかりイスタンブルっ子です。  段々と景色がオレンジ色になり、お別れの時間になりました。子猫たちも遊び疲れたのでしょう。すこしぐったりした様子です。(親子並んだ写真)  ふと見ると、子猫の一匹が顔をあげて広場を見つめていました。夕日に照らされた横顔は、先ほどのあどけない子猫の顔から一変し、凛とした逞しい顔つきをしていました。彼らのまっすぐな瞳に「イスタンブル」という街はどのように映っているのでしょうか。これからも、好奇心旺盛にすくすくと成長して行ってほしいものです。  猫との出会いも一期一会。縁があって楽しい時間を過ごせたときは、まるで友人と別れるかのような寂しさが残ります。  いつかまた彼らの大きくなった姿を写真に撮りに行きたいなと思いつつ、アヤソフィアを後にすることにしました。 イスタンブルに行く楽しみがまた一つ増えた出会いでした。

ブリュエンニオスの歴史 ビザンツ人が語るビザンツの歴史

ブリュエンニオスの歴史 ビザンツ人が語るビザンツの歴史

ブリュエンニオスの歴史 12世紀の東ローマ帝国の軍人「ブリュエンニオス」が残した貴重な本「歴史を書く人たちのための資料」。 ブリュエンニオスについて英語で読める資料が少ない中、アメリカ人ビザンツ研究者レオナラ・ネヴィル氏がまとめた一冊。 日本の研究者にもお勧めしたい。 Heroes and Romans in Twelfth-Century Byzantium: The Material for History of Nikephoros Bryennios Leonara Nevil 2012, Cambridge University Press   ご購入はアマゾンにて 日本ビザンツ学会ホーhttps://loveturkey.jp/2016/02/26/bizans-association-of-japan/ムページ

ブログ紹介 A Life in Istanbul

ブログ紹介 A Life in Istanbul

ブログ紹介 A Life in Istanbul ブロガーは2013年7月よりイスタンブール在住の方です。 A Life in Istanbul 『生きることは修行』をこの国で実感しつつ、辛かったはずの修行が段々と楽しさに変わる不思議な国トルコ。そんなトルコでの毎日をご紹介します。 Living in Istanbul since July 2013. The life here is not easy. It is very challenging, but it is also a great opportunity for me to know more people by experiencing different cultures. If you have any questions about Istanbul or Turkey, feel free…

『イスタンブルで猫さがし』 新藤悦子

『イスタンブルで猫さがし』 新藤悦子

 『イスタンブルで猫さがし』 新藤悦子 <あらすじ> トルコの美しい猫――二色の瞳を持つワン猫に会いたい! という口実で、教室から逃げるようにして、父親の赴任先のイスタンブルにやってきた5年生の愛。アジアとヨーロッパ、2つの世界が見える街で、ワン猫をさがしながら、愛が見つけたものは……? 日本で生まれ育って初めて外国で暮らす愛、幼い時から外国を転々としている未来、トルコ人の父と日本人の母を持ちイスタンブルで生まれ育った勇人――。バックグラウンドの違う3人の子どもたちが出会い、悩みをぶつけ夢を語り、地元の子たちと衝突したり友情を結んだりしながら1匹の猫をさがす中で、新しい世界に目が開かれていく様子が鮮やかに描かれ、感動を呼びます。 ご購入はアマゾンから

『イスタンブール日本人学校』
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『イスタンブール日本人学校』

『イスタンブール日本人学校』 イスタンブール日本人学校初代校長として、異文化の中の学校づくりをゼロから始めた著者の奮戦記。トルコでの様々なエピソードを通して、日本人学校の理念や教育方針を読みとることができる。(「MARC」データベースより) ご購入はアマゾンより イスタンブール日本人学校ホームページ

『ことだま・イスタンブル』 日本・トルコ 共同著作
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『ことだま・イスタンブル』 日本・トルコ 共同著作

『ことだま・イスタンブル』 日本・トルコ 共同著作 2015年 アルケオロジー・ヴェ・サナト出版 日本からトルコを、トルコから日本を見つめ、2か国、2言語で出版された文芸作品。 2015年に出版された『はじまり』は、日本とトルコ、また両国につながりを持つ芸術家、作家、学者、研究者による共著。各執筆者がそれぞれの立場から見た日本・トルコ両国のつながりや、文化・文芸、歴史などについて綴る。これまで注目されることのなかった二国の文芸的側面に光を当てた珠玉の一冊。 Love Turkey ストアからのご購入はこちら↓ 『ことだま・イスタンブル』 詳しくはこちら